2021年 比較家族史学会 第68回 春季研究大会のお知らせ

2021年 比較家族史学会 第68回 春季研究大会のご案内

 

【日程】 2021年6月19日(土)・20日(日)
【会場】 京都大学・東京大学サテライトオフィス
【開催方法】 オンライン開催:Zoomウェビナー形式(定員:500名)【参加費・申し込み】 無料・要事前申込み(非会員も参加可)

 ・申し込み:専用申し込みフォーム

 また、以下のURLからも申し込めます。
        https://onl.tw/GWMQq1U

・申し込み締切:2021年6月15日(火)17時

【参加方法】 申込者に大会前にZOOM 参加に必要なURL等およびレジュメ入手方法を連絡
※多くの方々のご参加をいただき、無事、大会は終了いたしました。
 ありがとうございました。

【プログラム】

6月19日(土)

9:30~9:35 開会挨拶 小池誠(会長・桃山学院大学)
9:35~9:40 大会運営についてのお知らせ
9:40~11:20 自由報告 司会 宇野文重(尚絅大学)
9:40-10:05 宋円夢(京都大学文学研究科・院)
「中国における『二人っ子政策』以後のマス/ソーシャルメディアによる『家族像』の再編成─生政治を乗り越える可能性から」
10:05-10:30 田中美彩都(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))「植民地期朝鮮(1910–1945)における異姓不養原則の『伝統』化過程―婿養子制度導入の経緯と朝鮮社会の対応を中心に」
10:30-10:55 孫詩彧(名古屋大学男女共同参画センター・GRL)
「家庭役割の分担を調整するプロセス―中日育児期共働き夫妻の事例を用いて」
10:55-11:20 永野由紀子(専修大学)
「インドネシア・バリ村落の家族・親族関係・近隣組織―グヌンサリ慣習村の2つの部落の事例」

(休憩 70分)

12:30~18:00 シンポジウム
 テーマ
「東アジアはどこまで『儒教社会』か?―チャイナパワーとアジア家族」

 司会 落合恵美子(京都大学)・小浜正子(日本大学)

*主催:比較家族史学会・共催:科学研究費基盤B「東アジアにおける家族とセクシャリティの変容に関する比較史的研究」(研究代表者:日本大学文理学部・小浜正子)

開会と趣旨説明

12:30-12:45 小浜正子(日本大学)
「東アジアの家族主義を歴史化する」

12:45-13:00 落合恵美子(京都大学)
「アジアの重層的多様性―双系的アジア/父系的アジアと文明化」

第1セッション:儒教と家族―中国の思想と現実

13:00-13:20 小島毅(東京大学) 
「儒教経学における家族」 

13:20-13:40 佐々木愛(島根大学)
「儒教の『普及』と近世中国社会」 

13:40-14:00 第1セッション討論

(休憩 10分)

特別講演

14:10-15:00  Martina Deuchler 
“The Impact of Confucianism on the Korean Kinship System: A Reconsideration”

(休憩 20分)

第2セッション:儒教受容の多様な側面―近世東アジアの各地域

15:20-15:40 吉田ゆり子(東京外国語大学)
「儒教思想の日本的受容と職分観念―性別役割に注目して」

15:40-16:00 牧田勲(摂南大学)
「近世刑法と武士道儒教―忠孝を中心に」

16:00-16:20 武井基晃(筑波大学)
「琉球王府の家譜制度と儒教―新たな姓・家系の成立の仕組みを中心に」

16:20-16:40 桃木至朗(大阪大学)
「近世ベトナムにおける族の形成と村落社会」

16:40-17:20 第2セッション討論

(休憩 10分)

第一日目討論(17:30-18:00) 

討論者:豊島悠果(神田外語大学)

6月20日(日)

第3セッション:東アジアの近代と儒教

10:00-10:20 鄭智泳(梨花女子大学)
「朝鮮儒教家族論再考―大家族・家長権・国家政策」

10:20-10:40 官文娜(香港大学)
「東アジア養子縁組文書の比較と儒教的宗族原理」

10:40-11:00 森本一彦(高野山大学)
「民俗慣行と儒教」

11:00-11:30 第3セッション討論

(休憩 60分)

第4セッション:儒教的なるものの現在―祭祀・相続・系譜 

12:30-12:50 文玉杓(山東大学・韓国学中央研究院)
  ”Daughters’ Rebellion: Women and Lineage Property in Contemporary Korea” (娘たちの反乱―現代韓國社會における女性と宗中財産)

12:50-13:10 加藤敦典(京都産業大学)
「儒教的祖先祭祀モデルの複相性―現代ベトナム村落における家屋と居住と祭壇」

13:10-13:30 王小林(香港城市大学) 
「墓のない故郷へ―現代中国における『家』の機能」

13:30-14:00 第4セッション討論

(休憩 10分)

第二日目討論(14:10-14:50)

討論者  小倉紀蔵(京都大学) 

(休憩 20分)

総合討論(15:10-17:00) 

討論者 粟屋利江(東京外国語大学)

小泉順子(京都大学)

(*両日とも日韓通訳を予定)

17:00~17:05 閉会挨拶 床谷文雄(副会長・奈良大学)

17:05~17:10 参加者全員オンライン退出

17:20~18:00 総会 ※シンポジウム終了後、比較家族史学会総会を行います

*総会は大会とは別に「総会用zoom」で開催します(こちらは会員限定とするためです)。こちらも後日、会員MLで登録のお願いをしますので、大会とは別に参加申し込みをお願いします。

【大会運営委員長・委員】落合恵美子(京都大学・委員長)、小浜正子(日本大学)、税所真也(東京大学)、中村真理子(国立社会保障・人口問題研究所)、野辺陽子(日本女子大学)、李璟媛(岡山大学)

 

2021年 比較家族史学会 第68回 春季研究大会

【自由報告要旨】

宋円夢(京都大学研究科院):における『二人っ子政策』以後のマス/ソシャルメディアによる『家族像』の再編成─生政治をり越える可能性から」

 中国は2010年代に計画出産の緩和を段階的に取り入れ、2016年には全面的な「二人っ子政策」を導入した。「二人っ子政策」に関する先行研究は経済学・人口学からみる政策転換による影響、個人の出生意欲に影響を及ぼす要因という2つの方向に集中している。小浜正子は「一人っ子政策」の浸透と個人の対応に注目し、「一人っ子政策」が女性の自発性の形成を促したと主張している。本研究は先行研究でカバーされていない計画出産の緩和の過程に焦点を当て、国家・社会が社会全体の利益から出発し、個人の最もプライベートな身体・生殖に介入するという生政治の推進と、個人がそれをどのように意味付け、対応しているかを、2010年代にマス/ソーシャルメディアに構築された家族(特に女性や子ども)の象徴の変容を分析することで解明した。これにより、「二人っ子政策」が進んでいない理由に対し、生政治の可能性という新たな視点からの理解に付与することができる。
 結果は、まず国家主導型マスメディアの『人民日報』は国家が個人の生殖に対する新た期待・要求を発信し、国民を教化する役割を果たしている。2013年以後、国民の態度・反応により「家族団欒の象徴構築→出生意欲の議論→政策転換を支持する具体的な施策への注目」のように広報の中心が変わってきた。地方新聞は『人民日報』における国家からの発信とSNSのWeiboにおける生の声を繋げ、より個人の日常生活に近い媒体として、国家の生殖統制の推進を徹底させている。具体的には各新聞が「子育てがつらくても幸せが上回る」、「幸せな4人家族・高齢ママ」という象徴を積極的に構築している。
 一方で、Weiboは国家の統制から完全に逃れることができないが、国家の生殖統制に対する異議・批判を申し立てる場所を提供している。Weiboにおける個人は「きょうだいがなぜ必要なのか」という疑問をもって「二人っ子政策」の無条件礼賛に異議を唱えるにとどまらず、生殖統制それ自体が生殖の自由を侵害したと「計画出産」全般を批判している。さらに、効力が弱いと思われた「二人っ子政策」を支持する具体的な法規や社会の至る所で女性が被る不利益により、個人は社会や国家のあり方に疑問、公権力に不信を強く示している。
 要するに、マスメディアは積極的に新たな家族像を構築し、生政治の推進を水路付ける役割を果たしている。一方で、ソーシャルメディアは従来の無力な個人に生政治を議論する場を提供し、個人が生政治を乗り越える可能性を提起している。

田中美彩都(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)):「植民地期朝鮮(1910–1945)における異姓不養原則の『統』化過程―婿養子制度導入の緯と朝鮮社対応を中心に」

報告概要:韓国民法は1960 年の施行いらい、戸主制度を旨とした儒教的家族制度を規定し、本報告が主題とする養子に関しても、いわゆる異姓不養の原則―儒教祭祀の担い手が不在の場合に、父系血統を同じくする者を養子に迎えて家系を継承させる―に基づく法規をおいた。そのため、異姓養子と同姓養子の法的地位には差異があった。
 家父長制の打破をめざす女性団体らと、民法上の家族制度を「伝統」とみなす儒林団体や保守派議員との長い対立の結果、2005年に戸主制度は廃止され、父系血統に基づく養子の法的地位の差異も解消された。またその過程では保守派の主張する戸主制度をめぐる「伝統」が、実際には植民地期(1910–1945)に日本の影響をうけて形成された「創られた伝統」であることが明らかとなった。
 異姓不養を「伝統」とみなす認識もまた、植民地支配の所産といえよう。すでに報告者は、植民地期初期の朝鮮社会では異姓養子縁組が少なからずおこなわれ、士族層を担い手とする儒教的家族制度は社会変化を阻む因習として批判されたが、1939年に統治機関である朝鮮総督府が異姓養子とその一形態としての婿養子制度を法的に認めると、かえって異姓不養を「朝鮮の美風」とみなす風潮が生じたことを指摘した。ただし朝鮮総督府が婿養子制度導入をめざした背景や法改正の過程に関する具体的分析が課題として残った(田中美彩都「植民地期朝鮮における異姓養子制度の認容とその影響」『朝鮮学報』244、2017年)。
 そこで本報告では、朝鮮総督府による婿養子制度の導入経緯及び朝鮮社会の対応を中心として、異姓不養原則をめぐる「伝統」の形成過程の一端を論じたい。とりわけ注目するのは、1920年代に現れた婿養子制度導入の論議が、娘に対する間接的な財産相続の手段とみなされ、進歩派の賛成を獲得したことである。他方で儒林らは進歩派による儒教的家族制度への批判を孔子への侮辱としてうけとめ、抗議活動を展開した。報告では冒頭の韓国民法改正をめぐる動きを念頭に置きつつ、こうした過程がどのように異姓不養の「伝統」化に結びついたのかを指摘する。

孫詩彧(名古屋大男女共同参画センター・GRL):「家庭役割の分担を調整するプロセス―中日育期共き夫妻の事例を用いて」

【問題の所在】:家事育児など、家庭役割の分担が妻に偏る形でなされることは、長らくジェンダーや家族研究の文脈において批判されてきた。平等な分担を望みながら現状を受け入れざるを得ず、理想と現実の不一致に直面する妻たちの姿を、実証調査が描き出している。
 しかし、このような夫妻の役割分担の状況を単に抑圧や不平等として捉えるには適切ではない。夫を調査対象にした研究は、男性が家庭役割を取得するプロセスの複雑さと難しさを示している(高山2016)。妻のゲートキーピングが夫の家事参加を少なくする可能性もある(中川2018)。他人の手助けという立場を甘受しないで、夫と交渉して夫妻間の新しい均衡点を作り出そうとする妻の実践を、舩橋(2004)は「ジェンダー契約」と呼んでその重要性を論じた。
 以上を踏まえ、夫と妻がそれぞれ稼得と家庭役割に力点を置くという、偏る形で役割分担をしている夫妻が、このような結果にたどり着くまで役割をどのように調整してきたのか。本報告はそのプロセスを明らかにする。

【資料と方法】:本報告のデータは、未就学の第1子を育てる育児期の共働き夫妻双方を対象とした調査で得たものである。調査は2017年10月から2018年4月にかけて、日本と中国の都市部にある複数の保育施設経由で協力者を募集し、20組(夫妻40名)に半構造化インタビューを行った。本報告はそのデータの一部を用いる。

【議論】:本報告は夫妻ペアのデータで役割調整のプロセスを捉えた。その結果、妻は他人(子どもや夫)のニーズに合わせて行動する従来の図式に加え、自分を妻のサポート役として位置付ける夫たちの存在を描き出している。
 この夫たちは、妻と家庭役割を調整する際、家事スキルや勤務時間などの制限が常にあるなか、他人(妻)の手助けをすることで、家庭役割に加わる。この実践はジェンダー秩序を取り崩す力を内包するものとして捉えることができる。
 しかし、夫妻間のジェンダー関係が緩くなるものの、祖父母等の介入を避けるため夫妻は意図的に外部の協力と距離を取っている。これは、急な出来事の対応も含めてすべての役割遂行を夫妻内部で完結することになる。公的や家庭外部のサポートを取り入れづらくなった点では、家族のリスクを高める可能性がある。

【文献】
高山純子(2016)「共働きの夫の家事役割意識:妻との相互作用に着目して」家族関係学35:47-60
中川まり(2018)「共働きの妻における家事のゲートキーピングと夫の家事参加との関連性」日本家政学会誌69:789-798
舩橋恵子(2004)「平等な子育てにむかって:夫婦で育児の四類型」国立女性教育会館研究紀要8:13-23


永野由紀子(
修大):「インドネシアバリ村落の家族親族近隣組織―グヌンサリ慣習村の2つの部落の事例」

 本報告では、インドネシア・バリ州タバナン県ジャティルイ村のグヌンサリ慣習村にある2つの部落(バンジャール)の事例をとおして、バリ・ヒンドゥー村落の家族・親族関係・近隣組織の特質を明らかにする。インドネシアは多くの島々からなる多宗教・多言語・多民族国家である。バリ島(バリ州)はヒンドゥー教徒が多数を占めており、隣島のジャワ人とは異なる生活慣行をもつバリ人が多い。バリ・ヒンドゥーの社会では、財産(農地)は基本的に男子分割相続で、婚姻に際して夫方に居住し、屋敷地には父方親族が共住する。バリ・ヒンドゥーの社会で、日本の部落(ムラ)に近い身近な近隣組織はバンジャールである。バンジャール(部落)は、世帯と屋敷地から構成され、葬儀(埋葬式と火葬式)の互助組織(組)である。慣習村(デサ)は、3つの寺院を共有するバリ・ヒンドゥーの信徒集団であり、複数の部落(バンジャール)から構成される。バンジャールは、バリ島を研究する社会人類学や政治学や社会学の多くの研究者によってとりあげられてきた。そこではダディアといわれる父系親族集団の重要性がクローズアップされることが多い。だが、バンジャール(部落)を構成する最小単位である夫婦家族(≒世帯)および屋敷地に着目して、部落および慣習村の特徴を考察した研究はほとんど見られない。夫婦家族と屋敷地に視点を据えて部落と慣習村を分析することで、日本のイエ・ムラと対比してのバリ・ヒンドゥーの家族・親族関係・近隣組織の固有性と類似性が示されると考える。また、東南アジアの家族圏や屋敷地共住集団(結合)との連続性と固有性が示されよう。バリ州タバナン県(オランダ植民地以前はタバナン王国)は、バリの米どころで、男子分割相続が原則であるが、息子がいない場合は娘に婿をもらい娘夫婦が継承する慣行が広く見られる。本報告の事例であるグヌンサリ慣習村は、農業人口の多い棚田農村で、タバナン県のバリ・ヒンドゥーの農村社会や農村家族の生活が観察しやすいエリアである。

シンポジウムの趣旨および報告要旨、報告者プロフィール

【シンポジウムの趣旨】

 中国の台頭がめざましい21世紀の世界において、東アジアは中国との関係で再定義されつつある。中国文明圏は現代になっても共通する性質をもつという認識を表しているのが、儒教資本主義、儒教福祉国家などといったカテゴリー化である。「儒教」が中国文明を代表するレッテルとして用いられている。
 しかし、そもそも儒教社会とは、どのような社会を言うのだろうか。儒学の考え方はどのように、またどの程度、中国をはじめとする東アジア社会を規定しているのか、いないのか。この問いに対し、地理的には東南アジアまで含む広義の「東アジア」社会の比較を通して、答えを出すのが本シンポジウムの目的である。
 儒教は家族主義的なものであるとしばしば言われ、家族はこれらの社会それぞれの文化的な核とされてきたから、これは比較家族史を掲げる本学会がいつかは取り組まねばならなかったテーマであると考える。とはいえ、儒教の影響とされる家族主義・祖先崇拝の重視・父系血統主義など、尊卑のヒエラルキーを伴った人間関係のネットワークによる社会秩序形成は、儒教だけの専売特許でもない。
 このテーマに関する各国の研究状況はさまざまである。中国自身については、儒学を国家イデオロギーとして位置づけようとする動きがある一方で、異なる時代・地域・階層に対して、儒学がどのように異なった意味をもっていたのかを実証的に問い直す研究が始まっており、道教や仏教との対立および融合にも注意が向けられている。韓国では朝鮮時代後期に朱子学の影響により「朝鮮社会の儒教化」が起きたという説をめぐって、新たな研究が生まれている。その一方で、日本の学界は「儒教と日本」という問いをしばらく避けてきたのではないだろうか。それ自体が戦後日本のナショナリズムと自己認識の問題として興味深いが、今回はこの問いに、正面から、比較史的視点をもって向き合ってみよう。日本の「家」は固有の家族制度だと言われる一方、儒教の影響も指摘されているが、それはどのような意味においてだろうか。
 本シンポジウムではさらに、ベトナムはもちろんのこと、その他の東南アジア諸国も含めて、「儒教」というチャイナパワーが歴史的に、また現代において、アジアの家族やジェンダーにどのような影響を与えてきたのかを探りたい。その際、思想自体の変容および思想と実践の乖離と相互浸透、さらに儒教的世界観において周縁化されやすい女性と庶民層にとりわけ目を向け、「儒教」とジェンダー、「儒教」と階層の関係の解明に注力したい。

【シンポジウム報告要旨】

第1セッション:儒教と家族―中国の思想と現実

小島毅 (東京大学):「儒教経学における家族」  

 儒教の教義は五経を中心とする経典の文言によって定められていた。経文のテクスト本文がどのようにして書かれたかは中国古代の社会・文化の探究と関わる事象であるが、本報告ではその問題には触れず、もっぱら後代の経学すなわち経典解釈学を扱って儒教の家族観を探ってみる。経学は漢代に確立して唐代まで基本的にその内容が踏襲されていたが、宋代における新たな思想潮流の誕生とともに変質する。以後の近世儒教、特にその中核をなす朱子学において経文テクストの家族に関わる文言はどう解釈されたか、またそれらに基づいてどのような実践規範が定められたか。当然そこには社会の実態との相互関係が重い意味を持っていたであろうと想定されるけれども、本報告ではむしろ意図的にテクスト言説内部の論理を解読することに専念する。それによって「儒教社会」という概念設定にかかわる話題を提供したい。

佐々木愛 (島根大学):「儒教の『普及』と近世中国社会」  

儒教は、他の宗教とは異なり教団組織(布教専従者集団)がなく、またその教旨に個人の救済を含まないため、普及拡大へのベクトルが本来的に微弱だという特徴がある。中華帝国にとって儒教の普及は社会の秩序化のために行われるべきことであるが、しかし社会の末端まで把握して人々を教化することは統治能力的にまず不可能であったから、儒教文化を高次に修得した者を登用する科挙官僚制に加え、家族倫理上卓越した行為を行った者がいればその里門に表彰施設を設ける旌表という手法をとった。つまり儒教的価値観を修得した者の社会的上昇を可能にする道をつくることで、人々の自発的な儒教の受容を促そうとしたのである。しかしこのような功利と直結させる方法をとったことで、儒教の理解や実践が影響を受けることになり、本来の経書理念とは異なる家族形態や経書の規定を逸脱した行為が正しいと認識されることになったりもした。本報告では近世中国社会において儒教の普及が目指された時に起こった諸相について考察を行いたい。    

特別講演

Martina DeuchlerThe Impact of Confucianism on the Korean Kinship System: A Reconsideration

This paper deals with the story of a process of change that turned Korea’s indigenous bilateral society into a patrilineal society, starting with the dynastic transition from Koryŏ (918-1392) to Chosŏn dynasty (1392-1910). This process was unique because no other example of a social transformation as comprehensive and compelling as Korea’s exists anywhere in or outside of East Asia. The introduction of Neo-Confucianism imported from China in the late fourteenth century provided the driving force that initiated this transformation. The ideological founders of the Chosŏn believed that if they enforced the rules and models of China’s classical literature, as outlined in such ancient works as the Rituals of Zhou (Zhouli) and the Records of Rituals (Liji) and explicated by Neo-Confucian commentaries, they would be able to create an ideal social system that would give state and society new stability and prosperity.

This paper outlines the process of change by discussing the restructuring of the Koryŏ descent group, ancestor worship, inheritance practices, the changing status of women, and the eventual development of patrilineal lineages. In reaction to the adoption of Confucian-style reformed rituals, a uniquely Korean institution, called munjung, was created that was to mitigate the conflicts and frustrations among brothers over the introduction of primogeniture. It is the emergence of this institution that throws doubt on whether we can speak of a full Confucianization of Korean society.

In today’s Korea, the patrilines and their concomitant institutions are being weakened by the introduction of Western legal concepts. Western principles of individual rights, equality, and rights to property, among others, have informed new legislation that is gradually undoing the patrilineal features of the Chosŏn lineage and re-introducing bilateral elements into modern society.

 

第2セッション:儒教受容の多様な側面―近世東アジアの各地域

吉田ゆり子(東京外国語大学):「儒教思想の日本的受容と職分観念―性別役割に注目して―」

 これまで、中国・韓国・日本の伝統社会が、儒教イデオロギーを共通の基盤とする観点から、日本近世における女性の社会的位置に対する儒教の規定性が問題とされ、比較研究も進められてきた。しかし、日本に儒教が受容される過程で、中国や韓国のように必ずしも朱子学が主流とならず、日本社会に適合的な形で変容が加えられていったことも、すでに指摘されてきたところである。本報告では、儒教イデオロギーという共通項と、日本近世社会の独自性に留意して、女性の社会的位置を考えようとするものである。近世社会は、小経営体である家を基本とし、それぞれの家業が社会的に編成された身分制社会である。家主(男性)は家業を遂行することで、社会的な「役割」「職分」を果たす一方で、「閨門の内」とする女性は、身分に関わらず、すべて同じ「役割」「職分」を有するものと儒学者により説明される。こうした考え方の形成過程、社会への普及のあり方、そして社会の実態を検討していきたい。

牧田 勲(摂南大学名誉教授):「近世刑法と武士道儒教―忠孝を中心に―」

 一般に近世刑法の特徴の一つとして、「封建道徳の尊重」「儒教の多大な影響」が挙げられる。むろん刑法以外の諸立法や司法・行政(法執行)の領域においても同様であるが、     とりわけ刑法においては五倫の道の逸脱は、そのまま法定刑の軽重に関わり、同じ犯罪行為であっても主従・親子・夫婦・親族など、身分関係の重要度によって刑罰が差別化される。その意味では、刑法は当時の社会の関係性の重要度を典型的に示す法といえる。また、日本の近世社会は、武士による武断的統治(番方優位)に始まり、間もなく文治政治(役方優位)に転換するが、儒教は文治時代以降影響度はより強くなっていくものの、それは一貫して武士社会の秩序観、道徳観に適合したものとして、あるいはそれを補強するかたちで、受容され、解釈されたものといえるのではなかろうか。その意味では、日本の儒教は「武士道」と寄り添ったものといえる。この報告では、幕府刑法の中の忠孝の特徴を紹介したい。

武井基晃(筑波大学人文社会系・准教授):「琉球王府の家譜制度と儒教―新たな姓・家系の成立の仕組みを中心に

 琉球王国の近世(1609年~)において、琉球王府の士(サムレー)は一門の宗家を通して家譜(系図)と称する公文書に子女の生没・婚姻、男性の王府での履歴を記録し、系図座(1689年設置)による認証を受けた。琉球史・民俗学の先行研究では家譜に見られる士の宗家の承継、血筋と家筋、儒教的な理念の影響(同姓不婚・異姓不養)が論じられてきた。
 本発表では、琉球王府の家譜制度の成立過程(例:1730年「系図座規模帳」制定)と儒教の受容史をともに概観した上で、その前後の時代における新たな姓・家系の成立の仕組み、すなわち①士の男子の他姓への移籍(養子とは別。系図座設置以前、家譜制度成立過渡期の事例)、②特殊技能や献金による平民から士への新規取立(新参士。系図座規模帳制定以降の事例)の分析を通して、近世琉球の人事法制下における琉球士の確定と維持について考察し、それは儒教的理念なのか日本のイエに近いものなのか検討するための論点を提示する。

桃木至朗(大阪大学名誉教授):「近世ベトナムにおける族の形成と村落社会

 本報告は、もともと双系制的な家族・親族構造が支配的だったと考えられる現在の北部・中部ベトナム社会(中国に対抗する小帝国を作ろうとしていた)において、中世・近世(おおむね10~19世紀)にどのように父系制原理が浸透したかを、儒教イデオロギーの影響とあわせて探る研究の一環である。中世の王権における父系王朝の「創出」過程と近世の東アジア的小農社会の形成を前提として、本報告では家譜・地簿など近世後期の村落史料の分析を試みる。かつて大規模な村落調査を行った紅河デルタ下部のナムディン省を主舞台として、中国の宗族の影響下に形成された父系親族集団ゾンホのあり方を、むしろ日本に似た村請制下の村落共同体と関係づけながら考察する。論争中の事柄も多く全体像を描き出すのは困難なので、今後の展望や方向性を述べるにとどまる点が多くなると予想されるが、日朝中などとの比較の土台のアップデートができれば幸いである。

第3セッション:東アジアの近代と儒教

鄭智泳(梨花女子大学):「朝鮮儒教家族論再考―大家族・家長権・国家政策

 朝鮮時代の家族をいわゆる’大家族’とみなすことは、近代社会において朝鮮時代を説明する知識の基礎となっている。一般的に大家族とは、三世代で構成された拡大家族を意味するか、家族の人数が多いという意味で用いられるが、朝鮮時代の大家族は、宗族集団(ゾンゾクジップタン)/門中(ムンジュン)と同じ意味で用いられている。すなわち、大家族の中で強い権威を持つ‘家長’(カジャン)がいる朝鮮時代の家族が、一つの常識として通用している。朝鮮時代の大家族は、近代の核家族の対立項として設定されており、朝鮮時代の家長権は、‘一族の長老’という漠然とした意味で、門中(ムンジュン)と血統、先祖祭祀というキーワードとともに‘近代以前’の伝統時代を代表する象徴になった。しかし、その用語の意味と用法、そして朝鮮社会の現実においての働き(作用)と変化過程に対する具体的な分析は行われていない。このように不確かであるが確固たるものとして固着した通説は、‘儒教家族’という名のもとで近代社会において機能している。これは近代社会の性別化された家族体系を設定するのと関連する。
 このような儒教家族ファンタジー(Fantasy)を批判するためには、朝鮮時代の法典などの資料に基づいて家戸、およびその代表である家長に対する規定を読み取ることから始める必要がある。朝鮮時代の家の構成と家長の地位は、そのものが矛盾とともに構成されたという過程を経ている。単一の通念を批判的に読み取ることを通して、日本の植民支配期になされた転換の意味を異なる角度から論議し、解放後の韓国社会の近代化過程で儒教家族論が機能したしかたを明らかにし、解体したい。

官文娜 香港大学(定年退職):「東アジア養子縁組文書の比較と儒教的宗族原理」

 養子とは、実父及び生家から離れて他人の子、血縁者及び非血縁者(例えば婿養子)をも含んでいて血縁関係のない家族の一員とし、養子縁組を成立させ、養父の継承人となることである。親族集団は人類社会の最初の集団であり、同時に人々の生活の基本単位、一つの独立的な社会組織である。各民族の親族集団構造は異なるため、養子を取る目的、方法と手続きも異なる。
 過去一連の日中親族構造、及び養子縁組の比較研究の上で、今度主に台湾のその比較研究を行う。清時代中期に大陸の「足羅漢」(戸籍に登録された地を離れてほかの地域へ流浪している者)は台湾移動に伴って中華文化も台湾に入った。数十年後、1895年日清戦争後台湾島・澎湖諸島は清から日本に割譲されて、半世紀の間日本植民地となった。本論では異文化理解の視野で台湾の関連文書、養子の財産権に関する裁判及び大家族の構造を日中親族文化の比較研究において、台湾家族構成する異なる文化の特質、及び基本的な伝統文化の因子について論じたい。

森本一彦(高野山大学):「民俗慣行と儒教」

 民俗慣行に対する儒教の影響を考える場合には、どのような階層や民俗慣行を対象とするのかに注意する必要がある。日本民俗学の創始者である柳田国男は、「新国学」を提唱し、儒教などの外来文化を排除したところに固有信仰が析出されるとした。葬儀などは、表層的には仏教や儒教の影響を受けているように見えるが、その基層には日本独自の先祖祭祀があると考えた。また家を武士的・儒教的なものとする考えに対して、柳田や有賀喜左衞門は日本独自の家族であるとした。日本民俗学が提示した日本基層文化論については十分に検証できていないが、半檀家などの民俗慣行に注目した時に、先祖祭祀や家は双系的な要素を見出すことができる。本報告では、近世後期から強まってくる家や先祖祭祀の男系的単系性が儒教に影響しているのかを検討する。

第4セッション:儒教的なるものの現在―祭祀・相続・系譜

Moon Okpyo 文玉杓 (山東大学・韓国学中央硏究院):Daughters’ Rebellion: Women and Lineage Corporate Property in Contemporary Korea (娘たちの反乱- 現代韓國社會における女性と宗中財産)

In July 2005, Korean Supreme Court ruled in favor of married-out daughters’ appeal for both the membership and concomitant rights in their natal lineage society (実家の宗中員資格の認定), the most critical of which includes a claim for a share in the corporate property (宗中財産). Given the fact that it took several hundred years during the early Joseon period (朝鮮時代1392-1910) to “Confucianize (儒敎化) the society and to establish the strong patrilineal principle that now characterizes Korean kinship and family, the ruling may be considered as an epoch-making event in that it fundamentally challenges the male bias in Korean kinship system. Together with the final abolishment of the family head system (hojuje, 戶主制) in the same year, Korean feminist groups in fact consider it as a major triumph in their struggle toward the overall gender equity. While it is true that the legal actions of the women in Daughters’ Rebellion Cases are exceptional, it is clear that their actions and the subsequent developments have presented fundamental challenges to the existing system. In the legal terms at least, many of the recent developments make it rather difficult to understand Korea as a ‘patrilineal society’ (父系社會). This talk will examine the background and implications of the historic move in connection with the kinship, family and gender relationship in contemporary Korea.

加藤敦典(京都産業大学):「儒教的祖先祭祀モデルの複相性―現代ベトナム村落における家屋と居住と祭壇」
 現代のベトナムでは、人口移動や少子化などを背景に、儒教的なイディオムのもとで規範とされてきた両親と子どもの同居・近居が難しくなったり、両親が住んでいた家屋での祖先祭祀が困難になったりしている。
 本報告では、私が人類学的なフィールドワークを続けてきた中部ベトナムの村落の調査から、とくに、息子のいない両親の祭祀をおこなうために娘たちが祭祀をおこなったり、家屋の外に特別に祠堂を建設したりする事例を紹介する。そういった工夫について、当事者たちは、例外的な行為であることは認識しているものの、それを「おかしなこと」と見なす世論があるわけでもなく、逆に「すばらしいこと」として顕彰するような雰囲気もない。何らかの意味での儒教的な規範からのずれは、彼らの日常生活のレベルでは、それほど反省的に検討すべき事象ではなく、いわば、普通ではないがありうべきこととして処理されている。
 ここから、ベトナムの人々の日常生活における儒教の影響や、儒教からの「ずれ」かたや、「ずれ」かたの気にしかたについて学問的に問うことの意味について考えてみたい。

 

王小林(香港城市大学):「墓のない故郷へ―現代中国における『家』の機能」

 本発表は、中国人の祖先祭祀である「家祭」を構成する三つの空間――「墓」、「祠堂」、「寝」が、中国革命以降いかに不安定な状況に置かれ、弱体化してきたかについて指摘するとともに、現代中国における「家」の機能に見られる新たな変化とその意味について論じようとするものである。発表では、2012年に中国の河南省で起きた、政府主導の「平墳運動」(お墓取り壊しキャンペーン)を具体例として、一般庶民の「墓」が直面し続けてきた現実の一端を示したうえで、中国革命によって「祠堂」が廃止され、本来その代わりに重要な役割を担うべき「寝」が、1950年代以降、政治指導者の肖像画の進出によって徐々に変質する現象に照明を当てる。こうした祖先祭祀の空間に見られる様々な変動が、現代中国における「家」の機能にいかなる影響をもたらし、今後の中国社会にとってどのような意味を持つかについて私見を述べてみたい。

【報告者プロフィール】

小島毅(こじま つよし)
東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門分野は中国思想史、儒教史。主要業績は『東アジアの尊厳概念』(共編著、法政大学出版会、2021年)、『儒教の歴史』(山川出版社、2017年)、『中国思想と宗教の奔流―宋朝』(講談社、2005年。講談社学術文庫、2021年)、『中国近世における礼の言説』(東京大学出版会、1996年)など。

佐々木愛(ささき めぐみ)
島根大学法文学部教授。専門分野は中国近世思想史、ジェンダー史。主要業績は『中国ジェンダー史研究入門』(共編著、京都大学学術出版会、2018年)、「「父子同気」概念の成立時期について-「中国家族法の原理」再考-」(『東洋史研究』79-1,2020年)など。

Martina Deuchler (マルチナ・ドイヒラー)
Professor emerita of Korean Studies of the School of Oriental and African Studies, University of London. She is the author of several works on Korean social history, among them The Confucian Transformation of Korea: A Study of Society and Ideology (Harvard, 1992) and Under the Ancestors’ Eyes: Kinship, Status, and Locality in Premodern Korea (Harvard, 2015).

吉田ゆり子 (よしだ ゆりこ)
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。大学文書館長。専門分野は日本近世史。主要業績は『近世の家と女性』(単著、山川出版社、2016年)、『兵と農の分離』(単著、山川出版社、2008年)など。

牧田 勲(まきた いさお)
摂南大学名誉教授。2021年3月まで摂南大学教授。専門分野は日本法史。論文として「「奥州白石女敵討」とその社会的受容」『比較家族史研究』第18号など。

武井基晃(たけい もとあき)
筑波大学人文社会系准教授。専門分野は日本民俗学(沖縄の門中・琉球家譜)。主要業績は『民俗学が読み解く葬儀と墓の変化』(共著、朝倉書店、2017年)、『〈境界〉を越える沖縄──人・文化・民俗』(共著、森話社、2016年)など

 

桃木至朗(ももき しろう)
大阪大学名誉教授。専門分野は中世・近世のベトナム史、東・東南アジア史と海域アジア史、歴史教育。主要業績は『中世大越国家の成立と変容』(大阪大学出版会、2015年)、『市民のための世界史』(共編著、大阪大学出版会、2014年)。

鄭智泳(Ji Young Jung)(チョン・ジヨン)
Professor, Dept. of Women’s Studies, Ewha Womans University; Director, Asian Center for Women’s Studies(ACWS), Ewha Womans University. Research Interest: Gender history in the late Chosŏn Period and colonial modern period Korea. Major Publications: Jilseoui guchukgwa gyunyeol: Joseonhugi hojeokgwa yeoseongdeul [The Construction of order and its Fissures: The Household register and women of in the late Chosŏn Korea](Sogang University Press, 2015). 東アジアの記憶の場(co-editor, 河出書房新社, 2011). Korean Buddhist nuns and laywomen(co-author, SUNY, 2011). Women and Confucianism in Chosŏn Korea: New perspectives(co-author, SUNY, 2011).

官文娜(かん ぶんな、グワン・ウェンナ)
香港大学アジア研究センター定年退職。専門分野は日本歴史、日中親族文化の比較。主要業績は『日中親族構造の比較研究』(日本思文閣出版、2005年)、『日本家族構造研究』(中国社会科学文献出版社、2017年)など。

森本一彦(もりもと かずひこ)
高野山大学文学部教授。専門分野は日本民俗学、歴史社会学。主要業績は『先祖祭祀と家の確立―「半檀家」から一家一寺―』(単著、ミネルヴァ書房、2006年)など。

 

文玉杓 (Okpyo Moon) (ムン・オッピョ)

中國山東大學講席敎授、韓國學中央硏究院名譽敎授。専攻分野は社會文化人類學。主要業績は 『新女性―韓國と日本の近代女性像』(共編著、靑年社、2003年)、『朝鮮兩班の生活世界』(共編著、白山書堂、2004年)、『Japanese Tourism and Travel Culture』 (Co-edited with Sylvie Gichard-Anguis. Routledge, 2009)、『京都西陣織の文化史:日本傳統工藝織物業の世界』(一朝閣、2016年)、『祖上の眼下で―韓國の親族、身分、地域性』(ドイヒラー著、金宇榮と共譯、ノモブックス、2018年)など.

 

加藤敦典(かとう あつふみ)
京都産業大学現代社会学部准教授。専門分野は政治人類学、ベトナム地域研究。村落地域の住民自治について研究。編著にWeaving Women’s Spheres in Vietnam: The Agency of Women in Family, Religion and Community. Edited by Kato Atsufumi. Leiden: Brillなど。

 

王小林(おう しょうりん、ワン・シャオリン)

香港城市大学アジア・国際研究学科准教授。専攻分野は東アジアの比較思想史。主要業績は『従漢才到和魂:日本国学思想的形成與発展』(台湾聯経出版、2013年)、『走入〈十牛図〉』(香港中華書局、2015年)、『日中比較思想序論』(汲古書院、2016年)、『新語文学與早期中国研究』(共編著、上海人民出版社、2017年)など。

 

豊島悠果(とよしま ゆか)
神田外語大学外国語学部アジア言語学科准教授。専門分野は朝鮮中世史。主要業績は「高麗時代における后妃の政治的権力」(『唐代史研究』21、2018年)『高麗王朝の儀礼と中国』汲古書院、2017年、「『黙斎日記』にみる十六世紀朝鮮士大夫家の祖先祭祀と信仰」(『ジェンダーの中国史』勉誠出版、2015年)など。

 

小倉紀蔵(おぐら きぞう)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。専門は東アジア哲学および日韓関係。主要業績は『韓国は一個の哲学である』『歴史認識を乗り越える』(以上、講談社)、『朱子学化する日本近代』、『北朝鮮とは何か』(以上、藤原書店)、『入門 朱子学と陽明学』『新しい論語』『朝鮮思想全史』(以上、筑摩書房)など。

 

粟屋利江(あわや としえ)

東京外国語大学大学院国際学研究院教授。東京外国語大学拠点南アジア研究センター長。専門分野は南アジア近代史、ジェンダー史。主要業績は『インド ジェンダー研究ハンドブック』(共編著、東京外国語大学出版会、2018年)、『現代インド5―周縁からの声』(共編著、東京大学出版会、2015年)など。

 

小泉順子(こいずみ じゅんこ)

京都大学東南アジア地域研究所教授。専門分野はタイ近代史。主要業績『タイ史』(

共編著、山川出版社、2020年)、『歴史の生成』(編著、京都大学学術出版局、2018年)など。

 

小浜正子(こはま まさこ)

日本大学文理学部教授。専門分野は中国近現代社会史、ジェンダー史。主要業績は『一人っ子政策と中国社会』(京都大学学術出版会、2020年)、『中国ジェンダー史研究入門』(共編著、京都大学学術出版会、2018年)など。

 

落合恵美子(おちあい えみこ)

京都大学文学研究科教授。京都大学アジア研究教育ユニット長。同文学研究科アジア親密圏・公共圏教育研究センター長。専門分野は社会学、とりわけ家族とジェンダーを中心とする領域。主要業績は、Asian Families and Intimacies (共編著、全4巻、Sage、2021年)、『徳川日本の家族と地域性―歴史人口学との対話』(編著、ミネルヴァ書房、2015年)など。