会長挨拶

2020年8月2日

比較家族史学会会長 小池誠

 第12代の会長を務めることになりました小池誠です。これから3年間、みなさまのお力を借りて、比較家族史学会の発展と、家族史研究の活性化のために少しでも貢献したいと考えています。

 振り返りますと、私が入会したのは1990年です。前会長の落合先生や歴代の会長の方々と比べて新参者だと思います。本学会が創立したのが1982年ですので、できたばかりの学会のエネルギーは知らない世代です(ただし実年齢はもうすぐ前期高齢者です)。法律学・社会学・文化人類学・民俗学・歴史学など諸分野の研究者が学問の境界を飛び越えて参加し活発に議論を交わす、学際的な学会の良さを感じながら、入会以来、多くのことを学んできました。その恩返しが少しでもできればと思い、これから会長としての務めを果たしていきたいと思います。

 学会関係の出版物に最初に関わったのは、1996年に弘文堂より出版された『事典家族』の項目執筆でした。そのとき担当したのは、「交叉イトコ婚」という社会人類学らしいが、とてもマイナーな項目でした。もともと東部インドネシアのスンバ島をフィールドとする社会人類学者でしたが、この学会で出会った多様な分野の研究者から大きな刺激を受け、自身の学問領域を少しずつ広げていくことができました。同じく比較家族史学会編集で弘文堂より2015年に刊行した『現代家族ペディア』では、編集委員として、おもに「第11章 グローバリゼーションと家族」を担当しました。そして今は日本経済評論社から2020年内の刊行を目指して『シリーズ家族研究の最前線』の最後となる『⑤ 世代間関係(仮題)』の編集に悪戦苦闘しています。このように自身と比較家族史学会との関わりを振り返ると、一つの学問領域に閉じこもるのではなく異種格闘技を展開しながら、「家族」という捉えどころがないが、人間の本質に関わるテーマに取り組むことの重要性を強く感じています。

 3年間の任期中、年2回の研究大会の開催と年報『比較家族史研究』の発刊を通常通り進めると同時に、新たに次のような3つの課題を重点目標に掲げて会長として尽力したいと思います。

(1) 若手研究者を中心とする学会活動の活性化

入会した大学院生など若手研究者を、一人でも多く業績をもった研究者として教育・研究機関に送り出すことが、学会の使命の一つだと考えます。比較家族史学会という特性を活かして、さまざまな分野の研究者に研究発表と議論の場を提供できるよう、さらに学会活動を活性化させます。

(2) 海外の学会との継続的な学術交流

落合前会長は任期中にソウルと北京で学会を開催し、海外の学会との学術交流を格段に進展させました。そのなかで培った国際的ネットワークを継続し、学術交流をさらに深化させます。その一環として、学会ホームページの英語版に取り組みたいと思います。

(3) 社会的発信力の強化

家族をめぐる諸問題について、会員がそれぞれの研究分野から社会的発信ができるように学会全体として体制作りを進めていきます。その一環として学会ホームページをさらに充実させ、また5巻でいちおう終了する『シリーズ家族研究の最前線』に続く学会として研究成果の出版を目指したいと思います。

 新体制は新型コロナウイルスの世界的な流行とともにスタートすることになりました。残念ながら2020年度の春季研究大会は翌年に延期が決まり、その結果、総会がオンラインで開催されました。すべてが初めて経験することばかりです。また、大学ではオンラインによる授業と会議が日常化して、誰もが戸惑いと不安のなかで一日一日を過ごすことになりました。このような状況下で、フィールドでの調査はきわめて困難になっています。ただ、このような困難に直面しても、私たち研究者は立ちすくんでいる訳にはいきません。2020年度の秋季研究大会はオンラインで開催されます。学会員が直接、顔を合わせて、議論できないのは残念ですが、高い交通費を払わずに、自宅で気軽に学会に参加できるというのはオンライン開催の利点でもあります。上で課題として掲げた「学会活動の活性化」も「海外との学術交流」も、オンラインによる研究会(Webinar)を企画すれば、研究費に恵まれていない若手研究者も発表しやすい、議論に参加しやすい環境作りが可能になります。コロナとともに新しい研究活動と知的コミュニケーションのスタイルを一つずつ模索していく時代だと思います。

 学会員のみなさま一人一人のご協力を得て、この困難を乗り越え、比較家族史学会の発展に力を尽くしたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。