2016年シンポジウム第1部報告要旨

 戦後日本における結婚行動の変化――人口学の視点から――

中村真理子(国立社会保障・人口問題研究所)

 1.       本報告の目的

本報告の目的は,統計データと人口学の研究成果に基づいて,戦後日本における結婚行動の変化の全体像を把握することである。近年注目されている通り,1970 年代以降の日本では未婚化と晩婚化が急激に進行してきた。日本における結婚行動のどのような側面が変化し,また変化してこなかったのかを検討することで,未婚化・晩婚化の構造を明らかにしていく。

2. 戦後の日本における結婚の動向

はじめに公的統計を用いて,結婚の動向を確認する。人口動態統計によれば 1970 年代前半には婚姻件数は年間 100 万件を超えていたが,その後減少し,2014 年には年間約 64 万件となった。

 3.結婚相手との出会いから家族形成まで

一般的に統計上では,結婚はある一時点で起きる事象としてとらえられている。しかし実際には,結婚は夫婦の出会い,交際,婚約などの事象を含む一連の過程の帰結(金子 1991)であり, 結婚の前後には同居の開始や出生などの事象の発生を伴うことが多い。結婚を,配偶者との出会いから家族形成まで含めた過程の一部としてとらえ,配偶者選択の方法,結婚した夫婦の特徴, 離婚の動向という 3 つの視点から検討していく。

日本における配偶者選択の方法は,かつては「見合い結婚」が主流であったが,現在ではほとんどが「恋愛結婚」となっている。また,婚前妊娠結婚の割合も増加しており,近年では妻が初婚で 20-24 歳の場合,婚前妊娠結婚が 3 割程度を占めている(岩澤・鎌田 2013)。

結婚した夫婦の特徴を見ると,夫婦の年齢差が縮小する一方で,夫婦の学歴の組み合わせは夫婦の学歴が同等か,夫の学歴が妻の学歴を上回っている場合が多数派を占めている状況が続いて いる。また,夫婦が持つ子どもの数や,妻が第一子出産後も正社員として就業を継続する割合もそれほど大きく変わっていない。ただし,離婚の動向を見ると,近年になるほど結婚経験者に占める離婚経験者割合が上昇している(岩澤 2008)。

戦後,結婚相手との出会いから結婚に至る過程には変化があった一方で,結婚によって成立した夫婦の特徴はそれほど大きく変わっていないと言えるだろう。ただし,離婚の増加から,近年 結婚は発生しにくく,解消されやすいものになりつつあることが示唆される。

4. 未婚化・晩婚化をめぐって

人口学では,個票データの分析と集計データ分析という 2 つのアプローチをもとに,社会経済 的要因と結婚行動の関係,特に女性の学歴と稼得能力が結婚行動に与える影響に着目した研究が 数多く行われてきた。(これらの研究の詳細は報告当日に論じる。)

また,近年では,配偶者選択の方法と未婚化・晩婚化の関係に注目した研究も行われている。岩澤(2013)は,死因別生命表の考え方を初婚の発生に応用し,初婚のタイプ別に 1970 年代以降の発生確率 の増加・減少の 傾向の分析を 行った。結果は見合い 結婚とともに 職場での出会 いを通じた結 婚の減少が指摘されている。

5.まとめと議論

戦後,特に 1970 年代以降の日本では,初婚のタイミングの遅れと未婚者の割合の増加が進行してきた。この間,結婚相手との出会いから結婚に至る過程は変わってきたが,結婚によって形 成される夫婦の特徴にはそれほど顕著な変化は起きてこなかった。

岩澤(2013)によれば,未婚化・晩婚化の過程で失われたのは,職縁結婚や見合い結婚,生殖・ 共棲と一体化した結婚,妻上方婚,性別役割分業に基づいた結婚,直系家族世帯を形成する結婚といった,戦後家族を特徴付けていたタイプの結婚である。増加してきたタイプの結婚もあるが,失われてきた結婚の量を補うほどには新たな結婚が生じてこなかった。今後,失わ れたタイプの結婚を取り戻すのか,新たなタイプの結婚が増加するのか,このまま未婚化・晩婚化が進むのか,さらなる研究が求められる。

 

地方における国際結婚の展開―戦略と家族・地域・国家との交渉―

賽漢卓娜(長崎大学)

はじめに

本発表では、結婚難の時代において、「国際結婚市場」で結ばれる日本人男性とアジア人女性の 結婚が生じ、その結婚後に家族・地域・国家とかかわりにおいてみせる一連の交渉を分析することを目的とする。とりわけ移動する側となるアジア人女性およびその支援に当たるボランティア は、家族、地域、国家との交渉において不利な状況において生きるための多様な戦略を示す。
日本国内における夫妻の一方が外国人の結婚数は、1990 年に 2 万 5000 組に上り、その後増加の勢いが止まらず、2002 年の 39,727 組に達し、その後も勢力を落とすことなく、2007 年に 44,701 組とピークを迎えた後、急速に勢いを失って 2014 年に 21,130 組となり、最盛期の半分ほどの規 模まで縮小した。日本国内での国際結婚の数を左右しているのは、おもに日本人男性とアジア人女性による結婚といっても過言ではない。日本人女性と多様な外国人男性による結婚は微増減が あるものの、おおむね横ばいの傾向を見せている。ある特定時点の国際結婚の夫婦を合わせた当事者数の統計データはないが、各種データを検証すると 100 万人以上と推測されている。

1.戦略
・社会構造の変動と戦略
・家族戦略の分析視角は、マクロな社会変遷過程とミクロな家族成員の行為および様式とつなぎあわせる。家族戦略には結婚戦略、教育戦略、相続戦略などの下位概念がある。
・象徴財市場としての結婚市場(ゴフマン,2007) 個人の階級的出自を特徴づけているすべての属性(経済資本、社会資本〔教育、立ち居振る舞 い、趣味、世界観〕、文化資本)が交渉され、取引され、委譲される場。
・国際結婚市場における「国際婚活」戦略
・戦略の主体は誰?       ☞   家族  or   個人 何らの家族戦略をめぐる家族の「利害」と、そこに関与する諸個人の「利害」は一致しない→ 個人が家族のそれとは異なる戦略を持ちうる

2.地域社会/ネットワーク/制度―公共圏と交渉する
母国で家族・親族や知人・友人に囲まれて育った女性たちにとって、「夫と子どもしかいない家 庭」や「近所との交流が少ない」日本社会に疲労→ストレスによる精神的疾患が発生しやすく、 援助ネットワークが乏しい
(1)保守的閉鎖的な農村地域における地域ボランティアの交渉戦略
・地域、自治体関係者を含む:ネガティブに捉え「外国人花嫁」日本人家族:隠さなければならない存在としての「外国人花嫁」
・重要な視点:日本語学習 多くの女性は日本語がほとんどできないまま来日、直後から日本人の家庭で生活。地域社会の一員となり日本で暮らす前提であるにもかかわらず、公的支援はほとんどない。
・地域ボランティアの戦略 地域の日本語指導者はまず、「嫁」として生活者という立場を強調する戦略で家族を説得、日本人地域住民との共通性を認識させ、第 2 段階では、外国人である価値を地域にとってのメリット と認識させ、外へ⇒移民は媒介者とともに近代家父長制的な固定観念が影響を及ぼしてきた閉鎖的な「家族」と戦略的に交渉することによって、結婚移民は「カテゴリー的な外国人」から名前のある「外国人」 の自己による定義へ
(2)ネットワーク形成、コミュニティ形成によって日本社会と交渉母国の親への心配との日本での生活の不安を同時に抱え、解決するための援助ネットワークが 乏しい。また、同国人同士にも、階層、学歴、出身地域、犯罪歴などにより交流する人数を少 数に留める。
・東日本大震災後、結婚移民の自助組織が萌芽
・中国人に新現象:新華僑のネットワークは広まり、職業など限定的ネットワークよりも包括的 になりつつあり、結婚移民も編入される→近年の嫌中的流れにより自己防衛? 移住の安定化?
・「移民あるいはマイノリティの文化は、集団のもつ現在のニーズや諸経験に基づいて変容を被る と同時に、現実の社会的環境と相互作用にもとづいて、絶えずに再生産されているのである」
(Schierup and Alund, 1987)⇒結婚移民の自助組織、ネットワーク形成困難を語る際、受け 入れ社会の文脈も踏まえるべき
(3)制度と現実の乖離
・2010 年代:「すっかり家族や地域の構の構成員」も、「浮遊している移住女性」も存在
・入国管理制度的には、今でも結婚移民は日本人の夫に法律上の配偶者として帰属している者でなければならない存在となっている
☞夫との身分関係に基づいて入国する女性は、夫との身分関係と独立して日本での居住が認められず、短期的に、離婚した場合、夫が死亡した場合、国外退去を命じられる可能性が高い。
日 本での「定住者」といった独立した個人の在留資格を得るためには、一般的には 3 年以上の実 質的な夫婦関係は最低限必要といわれている。
・DV 受ける場合であっても日本で在留資格を得続けるためには離婚の選択が容易ではなく圧倒的に不利な立場、妥当な保護られない現状に妥協
・「永住資格」、5 年目の離婚→    戦略?  対策?
⇒日本の現状の国際結婚は、建前として男女平等で互いの合意により結ばれる「私的領域」とし て位置付けられている反面、裏では、入国管理法によって制度的に移住女性=「良妻」「従順な 女」と要求

むすび
急増期の地方における国際結婚の展開については、当事者の困難や問題が多様な様相を呈して きた。地域社会で生き、ネットワークやコミュニティの形成をし、そうした中で制度と現実の乖離も生じた。しかしながら、急増期において、有効な公的な対策をとり切れずにかなりの部分を 民間のボランティア任せにする局面が続いていた。超少子高齢化の日本社会で老後を送る結婚移民は新たな局面を迎える。再検討をすべき時期に来ている。

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