2016年春季大会プログラム

2016年春季大会

プログラム

6月18日(土)

9:10~ 9:20  会長挨拶 森 謙二(茨城キリスト教大学)

9:20~10:40  自由報告 司会:山内 太(京都産業大学)

9:20 張 婷婷(東北大学大学院)
「近世越後『出稼ぎ』漁村の人口史的分析
――新潟県西蒲原郡旧角田浜村の事例分析を中心に」

10:00 岩本由輝(東北学院大学)
「東電福島第一原発のある町の中世――鎌倉末・南北朝期を中心に」

10:40~10:50  休  憩

10:50~11:50  総  会

11:50~12:50  お昼休み

12:50~15:10 シンポジウム

「出会いと結婚 第1部 現代の日本」
司会:平井晶子(神戸大学)

12:50 趣旨説明  床谷文雄(大阪大学)

13:00 基調報告  山田昌弘(中央大学)
「日本の結婚のゆくえ」

13:50 中村真理子(国立社会保障・人口問題研究所)
「戦後日本における結婚行動の変化――人口学の視点から」

14:20 賽漢卓娜(長崎大学)
「地方における国際結婚の展開」

14:50 質疑応答

15:20~15:40 休 憩

15:40~18:20 シンポジウム

「出会いと結婚 第2部 世界の結婚」
司会:床谷文雄(大阪大学)

15:40 伊達平和(滋賀大学)
「出会いと結婚に関する計量社会学的検討――アジア8地域を対象として」

16:10 大島梨沙(新潟大学)
「フランスにおけるカップル形成と法制度選択」

16:40 休 憩

16:50 宇田川妙子(国立民族学博物館)
「現代イタリア社会における結婚の意味」

17:20 渡邉暁子(文教大学)
「フィリピンのムスリムにみる結婚の現代的展開――多様性と連続性」

17:50 質疑応答

18:30~20:30 懇親会

 

6月19日(日)

9:30~12:10 シンポジウム

「出会いと結婚 第3部 日本の結婚の歴史的展開」
司会:森本一彦(高野山大学)

9:30 川口 洋(帝塚山大学)
「19世紀の奥会津における遠方婚からみた地域変化」

10:00 中島満大(県立広島大学)
「近代移行期における西南日本型結婚パターンの変容」

10:30 休 憩

10:40 服部 誠(愛知県立旭丘高等学校)
「恋愛から見合へ――家制度下の出会いと結婚」

11:10 蓑輪明子(名城大学)
「臨時法制審議会における結婚の位置」

11:40 質疑応答

12:10~13:30  お昼休み

13:30~15:50 シンポジウム

「出会いと結婚 第4部 全体討論」
司会:床谷文雄・平井晶子

15:50~16:00 閉会のあいさつ

 

シンポジウムの趣旨

本シンポジウムのテーマは「出会いと結婚」である。具体的には、結婚の意義と結婚する当事者の出会いのかたちの変化を時代的に、また地域的にも比較し、検証しようとするものである。とりわけ、だれと、だれが、どのように出会い、結婚に至ったのかを再考する。 

日本で未婚化(晩婚化)が注目されてから20年が立つ。この間も、結婚そしてその解消である離婚をめぐる様々な問題が話題となってきた。人口動態統計によると、2014年の日本国内での婚姻は64万9千組、平均初婚年齢は2012年で夫30.8歳、妻29.2歳、2013年は夫30.9歳、妻29.3歳、と徐々に上昇し、20年前からいわれている晩婚化が止むことなく進行している。いまや男性のみならず、女性も30歳で独身も普通のことになり、40歳前での初産も多くなっている。配偶者との出会い方については、昭和初年から戦後すぐの時代は見合い結婚が圧倒的に多かったが、昭和40年頃から恋愛結婚が見合い結婚を上回るようになり、現在では、見合い結婚は極めて少数派となっている。恋愛につながる出会いの場も同じ学校や同じ会社といったように限定され、夫婦の平均年齢差も少なくなっている。婚活、街コン、といった出会いを求めるイベントが大きな話題となる一方で、出会いのないままに年を重ね、生涯未婚となる者の割合(生涯未婚率)も高まっている。

他方で、結婚した夫婦も3組に1組が離婚する時代となり、終生の永続的な結びつきという結婚のイメージが失われてきているが、夫婦の一方または双方が再婚という再婚カップルも増加している。そこでは、未成熟子を抱えた親が自分のこと以上に、子のためを思って新しい出会い・結婚を望むという状況も見られる。

また、グローバル化の進展により、国・文化・宗教を異にする者の間での結婚(国際結婚・トランスボーダー結婚・トランスナショナル結婚・異文化結婚)も増えている。その出会いそして結ばれるかたちも所によって異なっている。さらに最近では、法律的な結婚にこだわらない結びつき(同棲、事実婚)も拡がり、同性婚あるいはパートナーシップ、シビル・ユニオンといった新しいカップルの形態が世界的に拡大している。伝統的な結婚ではなく、そのような新しい結びつきを求めるのはなぜか。誰が何を求めているのであろうか。

本シンポジウムは、次のような三部構成の発表(11名)と全体討論でなっている。

第1部では「出会いと結婚:現代の日本」と題して、現在の結婚事情を社会学的・人口学的に総括する。まず、山田昌弘基調報告「日本の結婚のゆくえ」では、前近代社会との比較においての近代的結婚の意味、近代的結婚の特徴を解き明かし、近代社会の構造転換に伴う近代的結婚の危機と、それに対する欧米の対応と日本の対応を比較し、近代的結婚に固執する日本で、結婚・恋愛が現実からバーチャル化している事情を分析する。次いで、中村報告では、特に戦後日本の結婚行動の変化を人口学的に検証する。なぜ、日本で未婚化・晩婚化が進展したのかという問いに対して、その答えを社会経済的要因、配偶者選択の方法の変化から探る。他方、賽漢卓娜報告では、日本における国際結婚30年の変遷を辿り、特に日本の地方に嫁いだアジア女性たちが家族、地域社会、国家との交渉において抱える困難と社会的支援のありかたについて問いかける。

第2部では、「世界の結婚」事情について取り上げる。伊達報告では、配偶者との出会い方に関し、どこで、どのような形で出会ったか、親の影響の強弱など、アジア8地域における量的データを基礎として計量社会学的検討を加える。次いで、大島報告では家族法学の立場から、フランスにおけるカップル関係制度の多様性について紹介し、婚姻、PACS、内縁(自由結合)の3形態から人々はどれを選んでいるのか、その選択の基準は何か、それぞれの法的特質は何かについて明らかにし、フランスと比べて法的多様性に乏しい日本では、カップル形成が今後ますます阻害されて行くと指摘する。他方、イタリアにおける「結婚」の急激な多様化について宇田川報告では、晩婚化・未婚化、別居・離婚の増加、同棲の急増など統計が示す現状から、結婚に関わる選択肢は増加しているが、「いずれ結婚」という考えはなお強く、生活・人生における結婚の位置づけが変化しているとする。そして、第2部の最後に、東南アジアにおける結婚の変容を渡邉報告が取り上げる。フィリピンにおけるムスリムの結婚について、ある親族の配偶者選択の展開をたどることで、出会いの変化、海外就労との結びつき、民族間・異教徒間結婚の増加と民族内結婚への回帰、慣習の継続など、多様性と連続性が絡み合う現状が論じられる。

第3部では、「日本の結婚の歴史的展開」から、結婚とカップル形成の意味を検討する。まず、川口報告は、19世紀の奥会津における遠方婚からみた地域変化を18世紀から19世紀にかけての人口・戸数、性比、出生性比、未婚者数等の人口動態及び関係史料から読み解く。次いで中島報告では、近代移行期における西南日本型結婚パターンの変容につき、結婚のはじまりに焦点をあてつつ、結婚形態と離婚との関係性などを歴史人口学的・歴史社会学的立場から論じ、何が変容し、何が持続したのかを示す。第1部の山田報告・中村報告では、近年の未婚化の要因として、見合い結婚から恋愛結婚への変化について論証されるが、これに対して、服部報告では、「恋愛から見合へ―家制度下の出会いと結婚」をテーマに、戦前の愛知県・三重県における恋愛慣行の広がりと家制度の確立による恋愛の衰退の状況の分析をする。第3部の最後として、蓑輪報告では、日本近代法制史の観点から、法律婚主義(届出婚主義)から儀式婚主義への変更なども検討されていた大正末期・昭和初期の臨時法制審議会による民法改正要綱などの分析を基に、婚姻を軸に、大正期の法制の変容を当時の法学者がどう展望したのかを検討する。

本シンポジウムは、結婚の「はじまり」に焦点を当てるものではあるが、結婚に至る過程では、離婚可能性など、結婚後のあり方が結婚のはじまりに大きく影響するため、各発表においても、全体討論においても、結婚のさまざまな局面の議論を妨げるものではない。

(床谷文雄・平井晶子)