2020 秋季大会シンポジウム趣旨説明要旨

2020年度比較家族史学会秋季研究大会シンポジウム

 

「東アジアはどこまで「儒教社会」か?―琉球とベトナムを中心に」

 

趣旨説明

東アジアの「儒教社会」の比較ヘ向けて―「家系」概念を中心に

小浜正子(日本大学)

 

(要旨)

今年の秋季研究大会では、今春の大会シンポジウムとして予定されていて、来春に延期になった「東アジアはどこまで「儒教社会」か?―チャイナパワーとアジア家族」のプレシンポも兼ねて、東アジアの「儒教社会」としての性格を議論します。日本・大陸中国・朝鮮・ベトナム・台湾などの東アジア社会は、「儒教文化圏」とまとめられることも多いですが、そのじつそれぞれの社会では、正統な儒教の考え方からかなり離れた習慣が維持されており、しかも場合によってはそれが「儒教的」だと認識されていたりすることさえあります。「儒教文化圏」の社会とは実際のところどのようなものであり、それが如何にして形成されてきたのかを、その社会の側の要因に注目しつつ、比較史的視点をもって家族をめぐる諸問題から考えてゆきたいと思います。今回の秋季研究大会では、とくに「家系」をめぐる問題を中心に、琉球とベトナムについての個別報告を踏まえて、各地域の状況を議論します。父系血統を重んじるといわれる「儒教文化圏」は本当に父系社会なのか。そうである場合は、何時からどのようにしてそうなったのか。あるいは、双系的または双方的なつながりは社会の中でどのような意味を持つのか。そもそも「父系制」と各社会で考えられている内容は、具体的にはどのようなことなのか。こういった問題について、活発な議論ができればと期待しています。