2016年比較家族史学会秋季研究大会のお知らせ

2016年比較家族史学会秋季研究大会のご案内

【日 程】2016年11月19日(土)
【会 場】筑波大学東京キャンパス文京校舎134講義室(階段教室)
(東京都文京区大塚3-29-1)
【参加費・申込み】会員1,000円、一般1,000円、学生は無料・事前申込不要
【プログラム】

10:30~10:40会長挨拶 森 謙二(茨城キリスト教大学)
10:40~11:20自由報告 司会:中込睦子(筑波大学)
阿部友香(京都大学)
「昭和期前半の農業奉公と障害者
―山形県庄内地方を事例に」

11:20~13:00休憩

13:00~16:50ミニ・シンポジウム
「沖縄の「家」の記録と継承
~家譜・墓・仏壇から考える~」
13:00~13:10 武井基晃(筑波大学)趣旨説明
13:10~13:40 武井基晃(筑波大学)
「先祖の歴史への関心と期待―家譜の分析と仏壇の新設―」
13:40~14:10 山城彰子(南城市教育委員会)
「系図家譜からみる婚姻・出産・離別
―女性に焦点をあてて―」
14:10~14:40 鈴木 悠(那覇市歴史博物館)
「近世琉球における銘書の受容と展開について
―浦添市内出土の墓誌銘(銘書)の分析を通じて―」
14:40~15:10 越智郁乃(立教大学)
「お墓の引っ越し
―現代沖縄における墓制と祖先祭祀の継承」

15:10~15:20 休憩

15:20~15:30 小池 誠(桃山学院大学)コメント①
15:30~15:40 森 謙二(茨城キリスト教大学)コメント②
15:40~16:50 討論
16:50 副会長挨拶

【ミニ・シンポジウム趣旨】

「沖縄の「家」の記録と継承」と題する本シンポジウムでは、琉球・沖縄の家譜・墓・仏壇について、近世の実態と近代を経て今日に至る現状までを読み解くことを試みる。そこで共通する課題は、家の歴史を記録しようとする「主体」とその「意思」への着目、そして過去の歴史と継承が今日に与え続ける影響の分析である。

本シンポジウムの4人の登壇者は、いずれも琉球・沖縄の家を対象に研究を進めており、その成果を持ち寄って、今回は民俗学・文化人類学・史学の枠組みを越えて議論したい。また、大学の所属の研究者だけでなく、沖縄の博物館や市史編さん室に所属する研究者も登壇することで、琉球・沖縄の歴史と今日に対して、多様な現場で活動する研究者による発表と討論の場を目論む。

15世紀に琉球王国が誕生したが、1609年には薩摩藩の支配下に入る(近世琉球の始まり)。1689年には王府に仕えていた譜代の家臣に対して家譜の提出が求められ制度として「士族」が成立した。1879年、450年続いた王国の廃止を経て近代沖縄に至り、1899年に日本の明治民法が施行されると近代日本的な家制度が導入された。沖縄戦を経て米軍占領下に入るが、その間も明治民法が日本本土よりも9年長く適用され、1957年に日本の新民法と同内容に改正された。しかし、男が家も財産も位牌も墓も一括して継ぐべきとされる考えは継続し、1972年の復帰後の1980年に「女が継いでなぜ悪いのか」という新聞紙上での特集を契機に「トートーメー(位牌)論争」と称される女性の位牌継承をめぐる社会的議論が起きた。この問題は今なお続いている。

以上のような背景をふまえて、まず武井は「家譜を通じた先祖への関心」について取り上げる。琉球王府時代の士族家譜という先祖の歴史資料に対して子孫がどのような関心や期待を抱き、子孫としていかなる義務を果たしてきたか、最近行われた元祖の仏壇・位牌の新設や、調査者と子孫の団体(門中団体)の協働と合わせて論じる。次に、山城は、「家譜に記録された女性」に焦点をあてる。家譜に記録された女性の婚姻・出産・離別の分析と、今日の沖縄県における女性の生活実態、男女共同参画社会づくりに関する県民意識などの調査をふまえ、県内に暮らす50代~80代の女性が位牌継承についてどのような考えを持っているか論じる。武井が家譜に記された男性の記録、山城が女性の記録というように分析を補完し合いながら、家譜に記録され、仏壇や位牌に表象される家族史を論じていく。

続いて、鈴木は「墓の記録」について検討する。沖縄島中部に位置する浦添市より出土した墓誌銘(銘書)の分析から、近世琉球における墓誌銘を記す習俗の実態とその受容のあり方について、都市の近郊と農村部との歴史的な比較を試みる。そして越智は、「墓の引っ越し」に注目する。沖縄各地から本島中南部都市部に集住する人々は、移住先でも何らかの形で祖先祭祀を継続している。やがて「墓の引っ越し(=新造墓と改葬)」を選択した人々が「故郷」からの「逸脱」という葛藤を抱えて新しい墓を造りあげる過程を通じて、現代の祖先祭祀と墓制について考える。鈴木・越智両者とも都市部と農村・離島などの間での移動・展開を比較検討することで、それぞれが対象とする時代における家と墓のあり方を描くことを目指す。

以上の家譜・墓・仏壇についてのそれぞれの成果をふまえた討論を通して、今日の沖縄の家の記録と継承をめぐる問題と実態を明らかにするとともに、比較家族史の論点から議論を深め家族像の再検討を目的とする。(文責:武井基晃)

 

【会場アクセス】
丸ノ内線茗荷谷(みょうがだに)駅下車「出口1」徒歩5分程度                                http://www.tsukuba.ac.jp/access/bunkyo_access.html
【昼 食】大学周辺、茗荷谷駅周辺に何軒かお店があります
【託児サービス】大会運営委員会では斡旋しません。
【大会運営委員】中野泰(筑波大学・委員長)・武井基晃(筑波大学・シンポジウム担当)・中込睦子(筑波大学)・平井晶子(神戸大学)・森本一彦(高野山大学)