2020 秋季大会 自由報告要旨

日本家族と「アジアの家族と親密圏」

落合 恵美子(京都大学)・森本 一彦(高野山大学)・平井 晶子(神戸大学)

 

(報告概要)

 現在は、多元化する世界にふさわしく知の生産の場も多元化し、対等な関係で互いに学び合うための仕組みが求められている。そこで、それぞれの社会で古典と言われるような作品や知名度が高く影響力の大きい著作を精選して共有するプロジェクト、Asian Intellectual Heritageが始まった。その最初の成果が英文のリーディングス「アジアの家族と親密性(Asian Families and Intimacies)」である。アジアにおける重要概念である「家族」をテーマに、アジアの9社会(日本、韓国、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、インド)を代表する研究者による国際編集委員会(報告者の落合、森本は同委員会のメンバー)を発足させ、各国のメンバーが推薦する文献の要約を持ち寄り、会議を重ねて内容を検討し、「家族イデオロギー」「家父長制」「結婚」「ケアレジーム」「セクシュアリティ」「ジェンダー」を主題とする6つのセクションの収録論文を確定し英訳した。10年以上をかけてようやくその出版が実現する(Asian Families and Intimacies,1-6, Sage)。

本報告では、この英文リーディングスをもとに、日本の家族研究をアジアの中に位置づけ直す。たとえば近代国家建設にあたり、穂積八束は「民法出デテ忠孝亡ブ」を著したが、タイでも同じ頃国王ラーマ6世が家族の近代化に悩み、家族姓とクラン姓の比較を試みている。それぞれ自国に「固有の課題」だと考えてきたが、アジアのなかに位置づけ直すと、ときに同じ課題に向き合ってきたことを再認識する。

現在、この英語版リーディングスから日本の議論との関連がより深いものを厳選し日本語訳を進めている。日本語訳により広くアジアの知を日本で共有するとともに、日本の関連文献を併置し、「アジアにおける日本」の再考をめざす。その先には日本の現在地を考える新たな地平が開けることを期待して(日本語訳と日本の研究を組み合わせたリーディングスを準備中)。今回の報告はそのための中間報告的なものであり、「イデオロギー」と「家父長制」を森本が、「結婚」と「ケア」を平井が、「セクシュアリティ」と「ジェンダー」を落合が担当する。)